「狭小住宅のつくり方」(⑦抜け感編)

2020.05.19

東京の住宅事情を考えると、地方にくらべて敷地は狭く、建築条件も厳しいケースがほとんど。しかも、土地形状が正方形であることは珍しく、「狭さ」や「形状」に頭を悩ませているひとも多いのではないでしょうか。そこで、狭小地でも失敗しない家づくりのポイントをまとめたコラムを不定期連載にてお送りします。第7回目は「抜け感」について。

目次

「抜け感」が空間にゆとりをつくる

コンパクトな暮らしとは、物理的な広さから「狭苦しい」「ゆとりがない」「我慢しながら暮らす」という印象を持っている人は少なくないでしょう。そうなると、どうしても「広さ」や「大きさ」を価値として求めてしまうことは避けられません。しかし、もしもコンパクトな暮らしに「ゆとり」が生まれる魔法があると知ったら、どうでしょうか? 不思議とコンパクトな暮らしも魅力的に思えるはずです。

その魔法とは、今回のテーマである『抜け感』です。一般的に、広さを表すときには数字(値)に頼りがちですが、実際には人間が広さを認識するときは数字ではなく感覚が優先されます。空間を広いと感じさせるためには『抜け感』を上手に使う必要があります。そこで、実際にわたしたちの施工例をまじえて抜け感や空間の広がりについてご紹介していきましょう。

【収納の上下を開けることで広がる空間】

【ストリップ階段によって広がる空間】

【空中に浮かんだロフトによって広がる空間】

【壁を格子にすることで生まれる広がりのあるシーン】

【勾配天井を使って広がる空間】

【吹き抜けによる上部への広がり】

「抜け感」は手仕事でつくる

空間を広く見せる効果のある「抜け感」ですが、困ったことに規格化されたものを組み立てる作業では、なかなか実現できないという難しさがあります。現場ごとに異なる条件のなか、精度の高い仕事が求められるため、優れた設計力(想像力)と施工力(技術力)が必要になることが多いのです。また、熟練された職人さんが生み出す手仕事の味わいは、「抜け感」と同じく住まい手の感覚を強く刺激します。世界にひとつの空間、わたしらしい空間がアイデンティティや誇りへとつながっていきます。

外空間と内空間から誕生する「抜け感」

敷地が小さくなると、どうしても諦めがちなのが外空間。中庭やバルコニーなど、プライバシーを保ちながら自然を感じられるスペースは、隣家がひしめき合う東京にこそ強く求められる空間ですが、居住スペースとの兼ね合いで諦めてしまうケースが少なくありません。しかし、上手に外空間とのつながりをつくることで「抜け感」のある設計をすることは不可能ではありません。それが、暮らしにゆとりをもたらす大切なポイントです。

【建ぺい率の算定外になる中庭空間】

【周囲の環境を計算に入れた窓の配置】

「抜け感」のある暮らしの事例はいかがでしたか? 限られた空間でも「抜け感」を意識して設計することで、広さを感じられる暮らしを叶えることができます。ぜひ、敷地や建物の大きさに諦めることなく、さまざまな工夫やアイデアで自分らしい暮らし方を発見してみてください。

「狭小住宅のつくり方」(①建ぺい率編)

「狭小住宅のつくり方」(②中庭編)

「狭小住宅のつくり方」(③容積率編)

「狭小住宅のつくり方」(④北側斜線編)

「狭小住宅のつくり方」(⑤手仕事編)

「狭小住宅のつくり方」(⑥可変性編)

「狭小住宅のつくり方」(⑧光と風編)

「狭小住宅のつくり方」(⑨収納アイデア編)

「狭小住宅のつくり方」(⑩空調編)

「狭小住宅のつくり方」(⑪間取り編・最終回)

狭小地の住宅の実例をみる

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