「狭小住宅のつくり方」(⑧光と風編)

2020.06.14

東京の住宅事情を考えると、地方にくらべて敷地は狭く、建築条件も厳しいケースがほとんど。しかも、土地形状が正方形であることは珍しく、「狭さ」や「形状」に頭を悩ませているひとも多いのではないでしょうか。そこで、狭小地でも失敗しない家づくりのポイントをまとめたコラムを不定期連載にてお送りします。第8回目は「光と風」について。

目次

「狭小住宅のつくり方」(①建ぺい率編)はコチラ
「狭小住宅のつくり方」(②中庭編)はコチラ
「狭小住宅のつくり方」(③容積率編)はコチラ
「狭小住宅のつくり方」(④北側斜線編)はコチラ
「狭小住宅のつくり方」(⑤手仕事編)はコチラ
「狭小住宅のつくり方」(⑥可変性編)はコチラ
「狭小住宅のつくり方」(⑦抜け感編)はコチラ

狭小住宅でも「光と風」のある暮らしを諦めない

都心の狭小住宅は周囲の隣家に囲まれている状況が多く、「明るくて風通しのよい暮らしは叶わない」とお客様自身が諦めているケースが多いのではないでしょうか? そんな悩みを解消するべく、ここでは事例を踏まえて、採光・採風の工夫をご紹介したいと思います。

採光は『上』から

突然ですが、「太陽の光」はどの位置から家を照らしているかイメージしてみてください。すると、横からではなく上から降り注いでいることに気が付くはずです。これは、ごく当たり前のことではありますが、意外と家づくりになると、このことを忘れがちです。壁に取り付けた窓、つまり横から必死に光を室内に採り入れようと設計するため、どうしても明るい空間を実現するには限界があります。そこで、窓の配置を少し工夫してあげるだけで、採光に大きな効果が生まれます。そんな目から鱗のアイデアをご紹介します。

【1.トップライトから3倍の光量を】

建築基準法ではトップライト(天窓)からの採光量は、壁に備えた同面積の窓の3倍と計算されます。つまり、横(壁)よりも上(天井・屋根)から採り込む光は、3倍にもおよぶのです。そこで、トップライトを上手に活用することで、近隣に邪魔されることなく、光を屋内に導くことができるのです。

【2.直射日光を避けるトップライトの設け方】

ただし、やみくもにトップライトをたくさん設ければ明るくて心地よい空間ができるのかと言えば、答えは「No!」です。たしかに明るさは確保できるかもしれませんが、「光が入る=窓や室内の温度が上昇する」というトレードオフの関係にあることを理解しなければなりません。そこで、トップライトを北側に設置することで直射日光が当たることを避け、室内の温度上昇を防ぐ配慮が求められます。

【3.トップライトの配置の工夫】

トップライトを設けられる場所は屋根以外にもあります。例えば、バルコニーはいかがでしょうか? 3階建ての2階部分にあるバルコニーにトップライトを設けた場合、光を1階にまで届けることができます。このように、光の通り道としてのトップライトを、様々なカタチに応用することで、壁の窓だけでは実現できなかった明るい暮らしを叶えることができるのです。

【4.ハイサイドライトを活用】

周辺環境を考慮してハイサイドライト(高窓)を設置することも、光を採り入れるための有効な方法の一つ。ハイサイドライトは壁(横)のなかでも高い位置に取り付けられるため、上から降り注ぐ光が入りやすく、さらに周囲の目線を遮ることができるというメリットも。

階段は『光の筒』

光と風を通すためにさまざまなアイデアをカタチにしていく必要がありますが、意外と盲点になりやすいのが階段。細かい段板の集合体かつ壁で細かく仕切られていることが多いため、明るくて風通しの良い空間を叶えるのは難しいと考えられがちです。しかし、アイデアや工夫によって、階段自体を『光の筒』へと変えてしまうことができるのです。

【5.ストリップ階段による採光の工夫】

階段は細かく仕切られた空間が連続するため、暗くなりがちです。しかし、この階段を工夫することで、下の階へ光を通す『筒』のような役割へと変化させることも可能です。その方法が、蹴込みと呼ばれる垂直方向の板を省略した「ストリップ階段」です。

【6.螺旋階段による採光確保】

螺旋階段もまた、暗くなりがちな階段スペースを明るく変化させられる工夫の一つ。フェンスをシンプルに設計すると、よりその効果は高まります。

【7.蹴込みには透過素材が◎】

蹴込みを省くことで空間に抜け感が生まれるストリップ階段とは別に、蹴込み自体に強化ガラスやポリカーボネートのような透過素材を用いることで、光の通り道にする方法も。

【8.踏板も透過素材に】

足を載せる踏板部分も透過素材を採用すると、より階段の周囲が明るくなります。

狭小住宅にこそ『吹き抜け』を

吹き抜けを設計するメリットは開放感だけでなく、採光や採風面においても大きくプラスにはたらきます。これは上下階をつなぐ吹き抜けならではの効果です。狭小住宅の場合、いかに床面積を広くとるかという点に注目が集まりやすいため、吹き抜けは贅沢な空間として採用を見送られがち。しかし、3階建ての1・2階部分など暗くて風通しの悪い空間が生まれやすい狭小住宅こそ、採光や採風に吹き抜けの存在が大切だと考えることもできます。

【9.吹き抜けを光の通り道に】

吹き抜けを設計するメリットは開放感だけでなく、採光や採風面においても大きくプラスにはたらきます。トップライトと組み合わせ、そこから採り込んだ光を下の階に落とすことが可能になります。また、暖かい空気は上に向かうという性質を利用し、トップライトを開けて暖気を逃がすことで、室内に自然な風の流れを生み出します。

【10.吹き抜け付近に室内窓を】

トップライトから採り込んだ光を、吹き抜けを通じて下の階に落としていく途中に設けた室内窓から個室へと導くことも可能に。室内窓を開ければ風通しもよくなり、さらに階下の家族とも吹き抜けを通じてコミュニケーションが生まれます。

壁を光の『媒体』に

直接、光を屋内に導くだけでなく、間接的に光を採り入れながら明るい暮らしを叶えることも可能です。その光の媒体として機能するのが「壁」。大きく白い壁に光を反射させれば、直接的な光よりも広範囲に渡って明るさを確保することができるのです。

【11.壁の反射を利用】

窓からダイレクトに採光をとる「直接光」とは対照的に、壁などに当たった「間接光」を利用することも、狭小住宅では有効です。事前に光の入り方をシミュレーションし、最適な場所に最適な大きさの壁を配置することで、間接光を上手に使った明るい空間づくりが可能になります。

【12.中庭の壁の反射を利用】

屋内だけでなく、屋外にも壁の反射を利用した明るい空間づくりが有効です。例えば、中庭の壁を白くすることで光の反射を生み出し、間接光によってより明るい外空間が実現します。

【13.隣地の建物を利用して、北側から光を採り入れる】

自分の建物の北側は、隣地から見れば南側。つまり、南からの光がしっかりと当たることになります。隣地の外壁に反射した「間接光」を利用するのも、採光のアイデアの一つ。隣地が近いという都心ならではのマイナス要素を、プラスに変換する発想力と柔軟性が求められます。

狭小地で「光と風」を採り入れる工夫はいかがでしたか? 周辺環境、地形、方角などさまざまな条件を考慮しながら、アイデアや工夫によって「明るく、風通しの良い暮らし」を叶えることができます。ぜひ、敷地や建物の大きさに諦めることなく、自分らしい暮らし方を発見してみてください。

狭小地の住宅の実例をみる

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