「狭小住宅のつくり方」(①建ぺい率編)

2019.11.05

東京の住宅事情を考えると、地方にくらべて敷地は狭く、建築条件も厳しいケースがほとんど。しかも、土地形状が正方形であることは珍しく、「狭さ」や「形状」に頭を悩ませているひとも多いのではないでしょうか。そこで、狭小地でも失敗しない家づくりのポイントをまとめたコラムを不定期連載にてお送りします。第1回目は「建ぺい率」について。

目次

「諦め」のない家づくりを

まず、わたしたちアースは18坪未満の土地を「狭小地」、そこに建てる住宅を「狭小住宅」として定義づけています。そして、18坪未満の土地で建築をご検討中で、わたしたちのところにご相談にいらっしゃるお客様の多くは、少なからず「諦め」をお持ちのように感じます。それは、他の建築会社に要望をぶつけたところ「できません」「難しいです」とハッキリ言われ続けるうちに、「やっぱり無理なんだ」という感覚が、知識・体験として植えつけられしまうからに他なりません。

わたしたちは「できません」という簡単な答えではなく、「何が可能なのか」という可能性から逆算した思考で堤案することをルールとしています。その結果、お客様にとって暮らしの新たな可能性を広げることができ、一緒にその価値を創造することができるのです。ですから、失敗しない狭小住宅のつくり方のポイントで一番重要なのは「諦めない」ことです。これはお客様ご自身だけでなく、建築会社側も肝に銘じておかなければなりません。

「距離の近さ」が「心の近さ」

「限られた条件の土地で、どうやって理想の住まいを建てるか」は、圧倒的に多い悩みのひとつ。そして導き出される思考の結果として、いつしか以下のような方程式が出来上がってしまいがちです。

「狭小地=狭いから理想の暮らしができない」

しかし、そもそも「大きさ」や「広さ」に関する感覚は、人それぞれ異なる価値観を持っているはず。どこからが広くて、どこまでが狭いのか? じつは、すべての人が共通して納得できる明確な答えはありません。さらに「広さ」と「心地良さ」は必ずしも比例するとは限りません。例えば、ダイニングで家族の食事シーンをイメージしてみてください。家族構成にもよりますが、大きなダイニングスペースは必要でしょうか? 食事をするなら3畳もあれば充分であり、4人掛けのテーブルがひとつあれば、顔をあわせながら食事を楽しめる空間が生まれます。そう考えると、広いダイニングが本当の意味で「理想の暮らし」でないことは明白です。理想の暮らしをつくる上で、そこでどんな人とどんな会話を楽しみ、どんな時間の過ごし方をするのか、そういった点にフォーカスすべきだとわたしたちは考えます。

これから家づくりを検討される方は、ぜひ「理想の暮らし方」について深く考えてみてください。すると、決して「広さ」と「心地良さ」が比例しないことに気がつくと思います。むしろ、限られたスペースから生まれる「豊かさ」のようなものがあることを発見するでしょう。空間が小さい(狭い)ということは、その空間を共有する人たちの間の距離が縮まり、それが心の近さにつながることを、わたしたちはこれまで多くのお客様から教わり続けています。

そう、「距離の近さ=心の近さ」こそが狭小住宅の最大の魅力であり、それをどうデザインしていくかが狭小住宅をつくる上で大切なポイントになります。

「建築ルール/建築基準法」と狭小住宅

限られた敷地を有効に使うためには「定められたルールのなかで何が可能か?」を探らなくてはなりません。そのため、まずは正確に「建築ルール=建築基準法」を把握しておくことが前提となります。その上で『どのようなアイデアや工夫を駆使しながら、魅力的な提案をできるか』、これこそがプロの腕の見せどころであり、創造性が生かされる場面です。

これから建築をされるオーナーのみなさまには、基本的なルールとして、以下の3点については知っておいていただきたいと思います。(土地探し等でも必要となるルールです)これらの制限をクリアしながら、暮らし方や間取りに違いをつくります。

『建ぺい率』……敷地に対する「建築物の面積」の割合

『容積率』……敷地に対する「建築物の延床面積」の割合

『斜線』……北側斜線・道路斜線・隣地斜線などによる建物の高さの規制

建ぺい率の工夫「土地全体を使う」

限られた敷地を有効活用する際、わたしたちが気を付けていることは、土地全体を「家」として捉えることです。土地全体を家にしたら「ルール・建築基準法の建ぺい率は?」と思われるでしょう。しかし、「外空間」を工夫すると、土地全体を上手に使うことができるのです。

外空間とは、具体的には『屋根がかかっていない敷地部分』のことです。屋根がかかっていない部分は建ぺい率に含まれないため、そのぶん建物を大きく建てることができます。

建ぺい率の工夫「非日常を味わえる中庭」

上記の土地全体を有効活用する手法から、さらに一歩進んだ考え方が「中庭」。わたしたちが手掛ける住宅の約7割は、この中庭のある暮らしです。前述の通り、『屋根がかかっていない部分=建ぺい率の対象外』というルールのなかで、外壁で囲んだり、植栽を入れることによって、外からの視線を気にしなくても良い「外空間」を生み出します。そこにリビングやダイニングをつなげることで、定められた建ぺい率の上限以上の広がりをつくり出すことができるのです。さらに、バスルームに隣接すれば外を見ながらバスタイムを楽しめるなど、暮らしに新たな価値が生まれます。

次回の「狭小住宅のつくり方」(②中庭編)では、この外空間と内空間をつなげる手法について、より深く掘り下げていきます。

「狭小住宅のつくり方」(②中庭編)

「狭小住宅のつくり方」(③容積率編)

「狭小住宅のつくり方」(④北側斜線編)

「狭小住宅のつくり方」(⑤手仕事編)

「狭小住宅のつくり方」(⑥可変性編)

「狭小住宅のつくり方」(⑦抜け感編)

「狭小住宅のつくり方」(⑧光と風編)

「狭小住宅のつくり方」(⑨収納アイデア編)

「狭小住宅のつくり方」(⑩空調編)

「狭小住宅のつくり方」(⑪間取り編・最終回)

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