戸建てリノベのメリット・デメリットをケース別に解説

2023.06.18

最近、さまざまなところで「リノベーション」という言葉を目にするようになりました。不動産の情報をみると、リノベーション済みの中古マンションが売りに出されていたり、古い戸建てをリノベーションして住んでいる事例なども、多く見受けられます。そこで、今回は戸建てのリノベーションについてご紹介しましょう。

目次

そもそもリノベーションとは?

よく、リフォームとリノベーションの違いについてご質問をいただくことがありますが、わたしたちが考えるリノベーションは「ただ単にきれいにすること」ではありません。“こんな暮らしがあったんだ!”という発見や驚きのある暮らしにアップデートすることこそが、リノベーションの最大の魅力なのではないでしょうか。

戸建てリノベをするケースとメリット・デメリット

リノベーションを決意する理由は人それぞれです。既存の構造躯体や素材を活かした個性的な空間にするため進んでリノベーションをおこなうケースや、本当は新築に建て替えをしたいけれど条件的に難しく泣く泣くリノベーションを選択するケースなどさまざまです。そこで、まずはリノベーションをおこなう代表的なケース(理由)を見ていきたいと思います。

①そもそも建て替え(新築)ができない ※再建築不可

②建て替えると、今よりも家が小さくなってしまう

③家族構成が変わって、部屋が余ってしまった

続いて、それぞれのケースと〈メリット〉と〈デメリット〉を細かく見ていきましょう。

ケース① そもそも建て替え(新築)ができない

「道路に接していないと新築ができない?」

建築基準法では、幅員が4m以上の道路に対して2m以上接している敷地が、建築(新築)をする上での条件とされています。つまり、前面道路が4m未満であったり、接している面が2m未満の場合、原則的には建築ができないということになります。下の図をご覧ください。

A……幅員4m以上の道路に2m以上接している=建築◎

B……幅員4m以上の道路に接している面が2m未満=建築×

C……幅員4m未満の道路に2m以上接している=建築×

D……幅員4m未満の道路に接している面が2m未満=建築×

このように、現在、既存建物が建っている敷地の状況を確認することが大切です。もしも、B・C・Dに該当する敷地に家が建っている場合、建て替えることは原則できないため、おのずとリノベーションという選択肢になります。(ただし、後述するセットバックをすれば、Cの土地も建築が可能になります)

ただし、再建築不可の土地はデメリットばかりではありません。再建築ができないというマイナス面を逆手にとったメリットがあることも覚えておいてください。

【デメリット】

・現在の家が崩れたとき(滅失したとき)に、建て替えができない

・住宅ローンの利用が難しい(担保評価が出ない)

【メリット】

・固定資産税が建築可能な土地よりも低い

・土地が安く買える(ただし、ローンが組めないケースが多い)

・将来、建築できる可能性があり、その際は資産価値が上がる

(※過去にわたしたちのお客様のなかで、かつて再建築不可地にお住いの方が、売りに出た隣りの古家付きの土地を買い取り、その土地が道路に接していたため、もともとお持ちだった再建築不可地とあわせて一つの土地に対して新築したというケースがありました)

中古物件、建て売り、注文住宅の購入を考えている人にとって、選択肢を広げる意味でも「再建築不可」の土地も一度検討してみてください。メリットとデメリットをよく比較していただき、「将来性のある土地(建物)だ!」となれば『買い』かもしれません。リノベーションをすることで、新築と変わらない快適性や耐震性を得ることができますので、ご安心ください。

ケース② 建て替えると、今よりも家が小さくなってしまう

「再建築不可から建築可能になるセットバック」

先ほどの【1】でご紹介した道路と土地の関係を思い出してください。Cは前面道路に対して2m以上接していましたが、道路の幅員が4m未満のため、再建築ができない土地でした。しかし、道路と敷地の境界線を後退して建築計画をすることで幅員4mとなり、新築を建てることが可能になります。この道路境界線の後退のことを『セットバック』といいます。

このセットバックは、道路中心線から2mずつ後退となります。例えば、現状の幅員が2mしかなかった場合、片側の土地が1m下がり、もう一方の土地が1m下がることで、合計4mの道路が完成するのです。

上の図では、もともと再建築不可だった土地CとDがセットバックすることで建築が可能になりました。(Dは2m以上の接道要件を満たしていないため、セットバックしても建築不可)

セットバックすることによって再建築ができないという問題を解決することができましたが、同時に新たな問題が出てきます。それは、『建ぺい率』による建築面積の制限です。

建築をするにあたって、計画している敷地いっぱいに家を建てられるわけではありません。それぞれのエリアによって、敷地面積に対する建築面積の上限(率)が定められています。これを『建ぺい率』といいます。

例えば、100㎡の敷地に対して【建ぺい率50%】という条件の場合、以下のような計算式になります。

敷地面積100㎡ × 建ぺい率50% = 建築可能面積50㎡

現状70㎡の建物が建っていた場合、単純計算で20㎡分が狭くなります。そこで、狭くなることを回避するためにリノベーションを選択されるケースがあります。このときのメリットとデメリットは以下のようになります。

【メリット】

・既存住宅を利用するため、基礎や木材の材料費が抑えられる

【デメリット】

・基礎コンクリートの劣化(補強に費用がかかる)

※築年数によっては基礎に鉄筋が入っていないことも

・住宅ローンが利用できないケースもあり

既存住宅の建築面積、セットバックの可否、今後の暮らし方など、さまざまな要素を加味した上で、どのような選択が最適かご検討されると良いでしょう。

ケース③ 家族構成が変わって、部屋が余ってしまった

「暮らしにあわせて、家を変化させる」

新築時は4人ないし5人で暮らしていたご家族も、お子さまが独立してご夫婦二人だけになると、部屋が余ってしまうという悩みも……。かといって、二人暮らしのために建て替えるのも現実的ではない。そんなとき、『減築』という選択はいかがでしょうか? 例えば、2階建ての2階部分をそっくり撤去することで、建物の重さも軽くなり、耐震面でも有効にはたらきます。

リノベーション事例3選

リノベーション事例その1

築48年戸建てリノベーション

外観の印象を大きく変化していますが、じつは既存の構造躯体を活かしているため、家の大きさ自体は変わっていません。ただし、窓の位置や大きさは変更しています。これは、あらかじめ耐震診断をおこない、耐力壁と呼ばれる地震に対する壁を多く配置しているためです。サッシの開口部を壁にすることで、家の耐力は飛躍的に向上します。

戸建てのリノベーションをする上で、階段の位置を変えると、それに伴って間取りはガラッと変わります。プランを考えるときには、階段の位置も気にしてみてください。

また、リノベーションをするにあたって、どの部分を重要視するか明確にしておくことが大切です。これは予算にも直結してきます。住宅はいくらあれば何ができるのかが不明確で、リノベーションはさらに曖昧になりがちです。構造躯体だけ残して、基礎の補強工事をおこなうと、おおよそ坪単価が80~120万円が目安になるでしょう。

リノベーション事例その2

基礎および構造躯体の耐震補強工事

上記の耐震補強工事をおこなえば、ほとんど新築と強度は変わらないぐらいまで、引き上げることは可能です。ただし、一つだけ新築と異なる点を挙げるとすれば、それは『基礎』です。

昭和56年5月31日以前の建物は旧耐震基準に基づいて建てられており、耐震構造の考え方が現在とは異なっていました。その一例が無筋の基礎です。旧耐震基準の建物の基礎には、コンクリートの中に鉄筋が入っていないものがあります。鉄筋が入っていないとコンクリートの粘りがなく、クラック(ひび割れ)が起こりやすくなります。

基礎の補強工事をすることで、これから先もまた20年、30年と安心して暮らせる住宅に生まれ変わります。

リノベーション事例その3

「再建築不可の2階建てを減築リノベーション」

こちらの住宅は再建築不可の土地に建つ、築50年以上の2階建て。同居していた親御さんが他界され、ご夫婦二人だけの暮らしになったことで、リノベーションを決意されました。「耐震性」「断熱性」「太陽光発電による節電」をご要望され、持て余していた2階部分を撤去することで、それらを叶えることに。

周辺一帯が再建築不可の土地のため、今後、高い建物が建つ可能性は少なく、太陽光発電をするには最適な環境といえます。まさにデメリットをメリットに変えた発想でした。平屋の陸屋根にすることで、太陽光パネルを載せられる面積を最大限拡張し、発電量を引き上げることに成功しました。

減築について詳しくみる

まとめ

戸建てのリノベーションのメリットとデメリットはご理解いただけたでしょうか? 戸建てリノベをおこなうに至った動機は様々ありますが、叶えたい暮らしを深く掘り下げるところから始まり、それに応じたご提案や施工が必要になります。戸建てリノベについて具体的に相談されたい方は、お気軽にわたしたちアースまでお問い合わせください。

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