「マンションリノベのはなし」

2018.11.06

最近、さまざまなところで「リノベーション」という言葉を目にするようになりました。不動産の情報をみると、リノベーション済みの中古マンションが売りに出されていたり、古い戸建てをリノベーションして住んでいる事例なども、多く見受けられます。そこで、今回はマンションのリノベーションについてご紹介しましょう。

目次

そもそもリノベーションとは?

よく、リフォームとリノベーションの違いについてご質問をいただくことがありますが、わたしたちが考えるリノベーションは「ただ単にきれいにすること」ではありません。“こんな暮らしがあったんだ!”という発見や驚きのある暮らしにアップデートすることこそが、リノベーションの最大の魅力なのではないでしょうか。

マンション・リノベーションのメリット

今回は、そのなかでマンション・リノベーションについてご紹介させていただきます。マンションの構造は、そのほとんどがRC(鉄筋コンクリート)造です。木造住宅と大きく異なる点として、建物の強度を保つために『筋交い』と呼ばれる柱と柱の間に斜めに交差させて取り付けた木材や、『耐力壁』と呼ばれる建物の横から来る力(水平荷重)に抵抗する能力を持った壁などが、室内の中にほとんど存在しない点が挙げられます。したがって室内を間仕切っている壁を撤去しても、構造的に弱くなったりするようなことはありません。なかには室内に耐力壁が存在するケースもありますが、コンクリートの壁になっているため、簡単に壊すことはできません。ポイントは、マンション・リノベの場合、ひとつの大きな空間のなかで、間仕切りをつくったり、逆に開放的な空間をつくったり、自由な設計がしやすいのです。木造住宅と比べて、壁や柱の制約が少ない点が特徴です。(※木造住宅が自由に設計できないわけではありませんので、お間違いなく)

マンション・リノベを叶えたサーファーの暮らし

専有面積が70㎡前後のマンションの場合、一般的に2LDKや3LDKなどの間取りが中心となりますが、家族構成やライフスタイルによってはこの広さを活かした1LDKにするなど、大胆かつ贅沢に暮らしを創造することができます。たとえば二人暮らしをされている方々にとって、リノベーションは非常に有効な選択肢と言えるかもしれません。 ※3LDK → 1LDKに間取りを変えた事例(Surfer’s House)

もともと玄関のすぐ近くにあった部屋を、拡張した土間収納に変化させた事例。これまでは、趣味のサーフィンから帰ってきて、部屋の一番奥にあるベランダまで濡れたウェットスーツやボードを運んでいましたが、玄関を開けてすぐに収納したり、干すことができるようになりました。

リビングは海辺のカフェをイメージしてデザイン。キッチンは既製品ではなくオリジナル仕様でつくりました。

【市川市|築35年マンション】リノベーションで叶えたSurfer’s House

マンション・リノベのデメリット

マンション・リノベでは、柱や壁の制約を受けない自由さがある一方で、キッチンや洗面化粧台、ユニットバスをはじめとする水まわり設備を、自由に移設しづらいというデメリットがあります。なかでも、トイレは一番動かしづらい設備のひとつかもしれません。壁から排水管が出ているケース(床上排水)などは、ほとんど動かせないと考えていいでしょう。トイレの向きを変えることは何とかできることもありますが、まったく別の場所にトイレを……、というわけにはいかないところがもどかしいです。

床の施工方法

それでは、トイレ以外の水まわり設備はどこまで動かせるのでしょうか。もしも、コンクリートスラブに床材を直貼りする場合(直貼り工法)には、水まわり設備の排水位置はあらかじめ決められたところから、ほとんど動かすことができません。そこで、『防振アジャスター』と呼ばれる支持脚を使って床を持ち上げ、コンクリートスラブと床の間に排水管を通すための隙間をつくること(二重床工法)で、はじめて水まわり設備の移動が可能になります。※下図参照

次に、施工手順を追ってご紹介していきましょう。

解体

既存の壁、床、設備等を一部もしくはすべて剥がして取り外していきます。

水道配管

続いて、コンクリートスラブの上に排水管を通して、スムーズに水が流れる道をつくります。

床下地づくり

上の写真のように排水管の太さよりも高い位置に床の下地が来るように、防振アジャスターで上げなければなりません。これに伴い、ケース・バイ・ケースではありますが、玄関の框(かまち)が10cm前後上がります。

床を上げるデメリット

排水管を通すために床を上げることで、人によってはデメリットと感じられる現象が生まれます。それは天井高が低くなってしまうことです。床が上がるということは、当然、床から天井までの距離が短くなるため、天井が低くなったことを実感するでしょう。

しかし、近年メディアでもご紹介されている通り、「本当は狭い(低い)ほうが好き」という人も多くいるため、メリットと感じるかデメリットと感じるかは個人差がありそうです。以前、石川県金沢市を観光した際に、古い町並みが残っている東茶屋を訪れました。そこで見た古民家はどれも天井が低く、およそ220cmセンチくらいだったように感じます。それでも全然違和感はなく、むしろ落ち着いたその佇まいに洗練さを感じたことを覚えています。インテリアとの関係もあると思われますが、とにかく「天井は高ければ良い」という考えを打ち消す体験となりました。そして、なによりも天井高が低くなることで発生するデメリットよりも、水まわり設備が動かせるようになって住みやすい間取りに変化できるメリットのほうが、はるかに上回るのではないかと考えます。それはまさにマンション・リノベーションの醍醐味とも言えるでしょう。

床を上げるメリット

床を上げることのメリットのひとつとして、床材の選択肢が広がることが挙げられます。床を上げずにスラブに直貼りする場合には、基本的に無垢材を使用することができず、選択肢は合板の床材のみになります。スラブ直貼りのフローリングは、階下の部屋への床衝撃音(軽量床衝撃音・重量床衝撃音)を軽減するために、裏に厚さ4mm前後の緩衝材(クッション)が貼られた床材を採用することで「配慮」します。衝撃音を吸収する床材は防音や遮音性能によってレベル分けがされていて、L値という遮音等級が音の伝わりにくさを表しており、この数値が小さいほど遮音性能に優れていることを示しています。各マンションによってL値の基準が異なるため、リノベーションに限らず床の張り替えリフォーム等をご検討の際は、一度、マンションの管理規約をご確認いただくとよいでしょう。(たいていはL40かL45を用いることになっています)

加えて、床を上げることで室内のバリアフリー化に貢献するメリットもあります。直貼り工法の場合によくあるのが、廊下よりも洗面脱衣室やトイレの床が少し上がっているケースです。10cm以上も上がっていることがありますが、これは排水管がユニットバスの下にあるために生まれた段差で、構造上どうすることもできません。二重床工法の場合、段差は玄関框(入口)のところだけできますが、室内はバリアフリーになりますので、生活動線は飛躍的に向上します。また、和室が廊下よりも3cmから6cm上がっているケースも多く見受けられます。これは畳の厚み分が上がっているためです。

まとめ

リノベーションをする上で二重床工法を選択すれば、水まわり設備の移動が可能になり、既存の間取りにとらわれない自由な暮らしが手に入ります。あわせて、様々な樹種の無垢材をチョイスすることができるようになるというメリットがあります。

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