「食洗器のはなし」
2019.10.31
食洗器の歴史
1800年代に世界で初めて誕生したと言われる食洗器。当時は手動式で使用済みのお皿に水がかかるだけの仕組みで、“乾燥”はおろか“洗う”という点に関して実用に耐えうるものではなかったようです。その後、1900年代に入り、アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)が電動式の食器洗い機を発売し、次第に普及の一途を辿っていきます。
一口に食洗器と言っても、業務用と家庭用に分かれ、さらに卓上型とビルトイン型に分類することができます。国内における家庭用食洗器は、松下電器産業(現・パナソニック)によって初めて誕生しました。当初はサイズや機能、価格面が普及の障壁となっていましたが、1990年代に入ると各社からコンパクトで低価格な卓上型が発売され、一気に需要が伸びました。また、当時はO-157の食中毒が流行し、食器を殺菌することへの意識が高まったことも、普及を後押し。2000年代には世帯普及率が10%を超えました。
現在、日本での普及率は28%まで拡大しましたが、アメリカやドイツの80%に比べるとまだまだ少ないのが現状です。
食洗器のはたらき
それでは、食洗器のはたらきについて詳しくみていきましょう。食洗器は「食器洗い乾燥機」の略で、読んで字のごとく『食器を洗い、乾燥させる』までの一連の流れを自動におこなってくれるものです。前述の通り、キッチンや架台の上に載せて使用する“卓上型”と、キッチンのなかに組み込まれている“ビルトイン型”がありますが、ここでは後者についてご紹介いたします。
食洗器のメリット
手洗いよりもキレイに洗える
食洗器は手洗いの代わりではなく、手で洗いにくいもの(例:ザル/お弁当箱/鍋類/おろし金/すり鉢/哺乳瓶/包丁/泡立て器など)やガンコな汚れの洗浄にも優れているため、手洗いよりもキレイに洗い上げることができます。その秘密は「水温」「水流」「洗剤」にあります。
まず「水温」。手洗いでは、せいぜい40℃前後のお湯で食器を洗いますが、食洗器は約52~62℃の高温で洗うため、しつこい油汚れもサッと溶かして洗うことができます。続いて「水流」ですが、食洗器の水流は垂直に飛ばすと約2mもの強力噴射。ガンコな汚れも直撃して、しっかりと洗い落とします。そして、食洗器用の「洗剤」には手洗い用洗剤には含まれていない『酵素』が入っているため、汚れを強力に浮かせて洗うことができるのです。
しっかり除菌で清潔
毎日使うものだからこそ、キレイなだけでなく安心して使える状態まで洗い上げる必要があります。小さいお子様やご高齢のお年寄りがいる世帯は、食器が清潔に「除菌」されているかどうか特に注意したいもの。食洗器を使用することで、いつでも清潔な状態を保つことができるのは、大きなメリットのひとつです。
嬉しいゆとり時間
1回の食器洗いに費やす時間は、平均すると約20分ほど。食洗器を使えば、その分の時間を違うことに充てられます。事実、「食洗器を欲しいと思う理由アンケート」では、圧倒的に多かったのが『時間を節約できるから』という回答でした。共働き世帯や、子育て世帯に限らず、あらゆるご家庭にとって時短は大きなメリットです。食洗器を導入することで、家族とのコミュニケーションの時間が増えるかもしれませんね。
手荒れの悩み解消
お湯や洗剤を使って手で食器を洗うと、手の油分が流され、手荒れの原因となります。食洗器を使うことで手荒れの原因が減り、悩みも解消されることでしょう。
節約、節水
食洗器は庫内にためた少量のお湯や水を上手に循環させて食器を洗うため、使用水量は手洗いのおよそ1/9。年間53.7トンもの節水が可能になり、地球環境への負荷軽減に大きく貢献します。加えて、手洗いよりも使用水量が少ないため、水道料金も大幅に節約することができます。なお、節水型の設備機器導入に対して、地方自治体によっては助成金を用意しているケースもございます。環境にも家計にも優しい食洗器を導入して、さらに助成金までもらえるのであれば、もはや選ばない理由はないと言えるでしょう。
ビルトインでスッキリ
食洗器があれば、汚れた食器や調理器具をキッチンカウンターやシンクにためることなく、いつでもスッキリとさせることができます。調理スペースも広がって料理がもっとラクに、もっと楽しくなること間違いなしです。もしも、現在お使いのキッチンに愛着があるのでしたら、そのキャビネット部分をビルトイン型食洗器に入れ替えるだけで、キッチンを丸ごと交換しなくても食洗器のメリットを得ることができます。(電気や水まわりの工事は別途必要になります)
食洗器のサイズ(深さ)
食洗器には浅型と深型があります。家族構成やお持ちの食器等によって、最適なサイズをセレクトされると良いでしょう。Panasonicのカタログによると、深型の容量が44点(約6人分)、浅型が40点(約5人分)となっています。庫内容積も深型が約60L、浅型が約40Lと違いがあります。加えて、節水量にも違いがあります。
食洗器のタイプ
家庭用のビルトイン型食洗器は、さらにスライドオープンタイプとフロントオープンタイプに分けることができます。スライドオープンタイプは引き出しのように食洗器を引っ張り出すことができるため、かがむことなく食器を入れられる点が特徴です。気軽に使えるため、人気があります。一方のフロントオープンタイプは扉が手前側に倒れる方式で、大容量かつ食器の出し入れのしやすさが特徴です。外国製の食洗器に採用されているケースが多いです。ノックをすると自動的に開く機種もあります。
各メーカーの食洗器の特徴
続いて、各メーカーがリリースしている食洗器の特徴についてご紹介しましょう。
Panasonic『バイオパワー』
洗剤の力を引き出す温度に独自の技術があります。洗剤の成分がしっかり性能を発揮する温度60℃まで、高濃度の洗浄液を加熱。酵素が働きやすい温度を保つことで、素早く汚れを退治し、除菌効果は99%以上にもなります。
三菱電機『シャワーミスト除菌』
洗剤成分を含んだミスト+間欠噴射によって汚れをふやかし、浮かせてはがす『シャワーミスト』は、汚れを落としやすくするため「つけ置き洗い」と同様の効果を狙った洗浄方式です。ミストで汚れを柔らかくし、間欠的に高温洗浄水(約50℃)を噴射することで、ガンコな汚れを効果的に落とします。食事の時間がバラバラ、家族全員の食事が済んでから洗うなど、まとめ洗いをすることが多いご家族に最適です。
リンナイ『プラズマクラスター』
重曹洗浄モードを搭載した食器洗い乾燥機に「プラズマクラスター」を採用。食器洗い乾燥機のさらなる安心、清潔を実現しています。「プラズマクラスター」技術とは、自然界にある+(プラス)と-(マイナス)のイオンをプラズマ放電によって作り出して放出し、浮遊カビ菌等を空中で除去するシャープ独自の技術です。高濃度なプラズマクラスターイオンにより、付着しているカビ菌の増殖も抑制します。乾燥時に外気から取り込まれる空気をプラズマクラスターが浄化することで、浮遊カビ菌や付着したニオイを強力に除去し、洗浄後の清潔な状態を保ちます。小さいお子様がいるご家庭にはピッタリの商品ではないでしょうか。
各メーカーの製品から仕様が近いものを比べてみました。
各項目を数字で調べてみましたが、あまり差がないと言えます。容量の違いなども含めて、こちらの商品以外にもまだまだたくさんの種類があります。機能も価格もさまざまです。
まとめ
食洗器選びは、その基準をどこに置くか難しいところもあります。できればショールームで実際に見て、使い心地などご体験いただけましたら、きっとご自身にあった食洗器が見つかると思います。各メーカーのショールームには、キッチンのスペシャリストがいますので、ライフスタイルや使い方などを含めてご相談された上で、決められるといいでしょう。
とはいえ、どの製品を選んだとしても、手洗いに比べて食洗器を導入したユーザーの満足度は非常に高いということがうかがえます。新築やリフォームをする際は是非、食洗器の導入をご検討ください。