「バスルームのはなし」
2020.01.29
昔のお風呂
ちょうど昭和40年代頃、お風呂の浴槽はタイル、湯沸かし器はバランス釜という組み合わせが一般的でした。浴槽の横に備え付けられたバランス釜からは煙突が伸び、ガスコンロのように点火してお湯を沸かしていました。ダイヤルを回しながら、強火から弱火まで火力を調整できるタイプは、いまではほとんど馴染みのない方式です。うっかり火を消し忘れて沸騰させてしまったという失敗談は、当時の人であれば誰しも一度は体験したことがあるのではないでしょうか?
しだいに浴槽のタイル目地がポロポロと剥がれ、そこから水が漏れたという話もよく耳にしたものです。それから、ステンレス製の浴槽に交換したケースも多かったようです。(とはいえ、タイルを貼ることは変わらないんですけどね)
その後、バランス釜が次第に姿を消していくと同時に、屋外に置けるガスふろ給湯器が出回り始めました。
東京五輪とユニットバス
今では一般的になったユニットバスの誕生は、1964年の東京オリンピックに深く関係しているようです。当時、海外から訪れるたくさんのお客様に対応するため、多くの宿泊先が必要でした。しかし、工期が非常にタイトで、従来のタイルのお風呂をつくっていては間に合わない。そこで、バスルームを簡単に据え付けることができるユニットバスが初めて誕生したのです。工場生産品の壁と天井を現場で組み立てるだけという商品を開発し、現場での作業時間を大幅に短縮することができました。
現在、マンションであればたいていの選択肢はユニットバスとなります。少し古いマンションには、タイルのお風呂を見かけたりまします。防水が切れると大変なことになるので、事前にメンテナンスすることをオススメします。
ユニットバスと造作のお風呂の違い
〈ユニットバスの特徴〉
1)1坪の広さがあれば非日常空間をつくることができる
2)32インチのテレビを備えることができる
3)人間工学に基づいて設計された浴槽の高さやシャワー位置など
4)断熱浴槽が採用されているのでエコ
5)漏水のリスクがほとんどない
6)短い工期で施工が可能(最短1日)
7)柱と壁の間にクリアランス(隙間)ができるため、数センチ狭くなる
8)施工が簡単なため、品質が均一
9)壁や天井が1枚のパネルでできているため、掃除が簡単(タイルのユニットバスは例外)
10)肩湯や打たせ湯、スピーカーなど、従来のお風呂にはなかった機能を選択できる
11)オプション次第では高額になってしまう
12)各メーカーからさまざまなモデルがリリースされているため、好みの商品を選ぶことができる
〈造作のお風呂〉
1)天井・壁・浴槽には様々な種類(木、タイル、石など)から選ぶことができる
2)個性的な空間をつくることができる
3)工期に時間がかかる(約10~14日)
4)下地作業がユニットバスよりも多い
掃除のしやすさは?
タイルでつくる造作のお風呂は、目地にカビが発生したり、汚れやすいというイメージが強いですが、そんなことはありません。浴室が乾くまで換気扇をまわして、掃除をすればいつもキレイな状態を保つことは可能です。ユニットバスと言えども、いつでもジメジメした状態で、掃除をしなければカビ(赤い汚れ等)や水垢もつきます。
タイル目地なども昭和時代の頃と比べると、研究開発が進んでいます。例えば、LIXILの「スーパークリーン目地」のように、カビが生えづらいようなものも出てきています。
〈スーパークリーン目地の特徴〉
●バス・トイレなど水まわりに適した既製調合目地材
●キラミック(抗菌)仕様で細菌の繁殖を抑制し、清潔な空間を提供
●水およびカビの栄養源の浸透を抑え、優れた防カビ性を長時間持続
床をタイルで仕上げている場合、酸性の洗剤が使用できます(タイルは酸に強い)。漂白剤を使えば、目地がきれいな白に戻ります。タイルは防水性がないため、壁にはしっかりと防水処理が必要になります。ここはタイル職人さんの熟練の施工技術で、柱や土台など腐らずに長持ちさせる工夫が必要になります。
造作とユニットバス、どちらがオススメ?
新築や戸建てリフォームの場合、造作のお風呂もユニットバスもどちらの選択も可能になります。どちらがいいか。それは個人の好みになりますが、現在主流のユニットバスだけが選択肢ではありません。換気扇がなく窓を開けて換気するしかなかった時代のイメージから、タイルでつくる造作のお風呂に対するマイナスな印象があるかもしれません。現在は換気扇の性能も良くなっているので、24時間換気にすれば浴室がジメジメした環境になることはほとんどありません。
また、高性能なサッシに交換したり、インプラス(内窓)を追加するなどして、寒さ対策にも気を配れば、造作のお風呂で快適なバスライフを送ることができます。
造作のお風呂に偏った記事になってしまいましたが、ユニットバスにもたくさんの魅力があります。どちらも毛嫌いせず、家づくりを楽しむ選択肢として楽しんでいただけたらと思います。